作品情報 2023年イタリア映画 監督:パオラ・コルテッレージ 出演:パオラ・コルテッレージ、ヴァレリオ・マスタンドレア、ロマーナ・マジョーラ・ヴェルガーノ 上映時間118分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷Bukamuraル・シネマ 2025年劇場鑑賞126本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村
【ストーリー】
1946年、イタリアの主婦、デリア(パオラ・コルテッレージ)は夫のイヴァーノ(ヴァレリオ・マスタンドレア)のモラハラ、DVを受け、意地悪な義父のオットリーノ(ジョルジョ・コランジェリ)の介護をしながら3人の子を育て、家計を助けるためにパートを掛け持ちしていた。
そんな彼女を長女のマルチェッラ(ロマーナ・マジョーラ・ヴェルガーノ)は同情しつつも、母のようになりたくないといっていた。そんな彼女が金持ちの息子のジュリオ(フランチェスコ・チェントラメ)からプロポーズされる。ジュリオの両親を招いて祝宴を開かなければならないが、貧乏なうえ寝たきりの義父もいて、酒を飲む暴れる父親を嫌がり、マルチェッラはデリアに助けを求めて…
【感想】
冒頭、ベッドで寝ていたイヴァ―ノが起き掛けにいきなりデリアにビンタするところから始まります。1946年のイタリアではこんな男尊女卑でDVというのが当たり前だったのか。当時の邦画をみてもここまでDVが執拗に続く作品は記憶にないので、国民性の違いかと驚きました。
さらに家庭だけでなくパートでも女性差別が強い。3年も傘の修繕のパートをしてきたデリアは新入社員に指導するようにいわれますが、男という理由だけでデリアよりも給料が高いのです。また、外出するのにいちいちイヴァ―ノの許可が必要で、気に入られなければ殴られます。コルテッテージが主演、監督をしているためDVシーンをミュージカル調にしてショック度を弱めていますが、男の僕でも観ていてつらくなってきました。
さらに、マルチェッラの結婚式をめぐるドタバタぶり。貧乏だというだけでバカにされるデリアたちですが、半地下の家に住んでいるのは「パラサイト」の影響か、それとも当時のイタリアでは当たり前なのかいろいろ考えてしまいます。暴力シーンも含めてコミカルなシーンを多くしているし、デリアの若いころの元カレのニーノ(ヴィニーチョ・マルキオーニ)、親友の八百屋のマリーザ(エマヌエラ・ファネッリ)、そしてDV被害を目の当たりにしているマルチェッラといった彼女を支える人もいるので、観ているこちらは深刻にならないように配慮しているとはいえ、こんな女性差別が起きている時代に生まれなくてよかったと思います。全編モノクロなのもえぐさを抑えられたかな
終盤は非常に緊迫感あふれる状況になるのですけど、僕も含めておそらく大半の人が想像にもしていなかった意外な展開へとつながっていきます。女性差別の構造を直すためには個人が逃げるのではなく社会全体をよくしなければならないという意味なんでしょうけれど、あっけにとられました。また、あからさまな伏線の使い方も意表をついており、今までに見たことのないタイプの作品です。本当に当時のイタリアの歴史や文化風土を知っていればもっと楽しめたでしょう。本国でヒットするのも納得の怪作でした。
【2025年に観た映画の最新記事】