作品情報 2024年フランス、ベルギー映画 監督:ジャック・オーディアール 出演:カルラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス 上映時間133分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2025年劇場鑑賞128本
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【ストーリー】
メキシコの敏腕弁護士、リタ(ゾーイ・サルダナ)は女性ゆえに男性弁護士からこき使われるアシスタントにとどまっていた。ある日、大金を支払うという依頼をOKしたところ、待ち合わせ場所でいきなり拉致されてしまう。
連れてこられたのは麻薬王のマニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)のところだった。なんと彼は自分が性同一性障害であり、妻のジェシー(セレーナ・ゴメス)と2人の幼い子供、そして組織を捨てて自分を死んだことにして性転換手術を受けたいと申し出る。極秘裏にリタは手術の準備を進め、マニタスはエミリア・ペレスという名前の女性に生まれ変わるのだが…
【感想】
前半のリタが女性ゆえに差別されるイライラ、マニタスに拉致して奇想天外の依頼を受けるあたりは、ミュージカル的な演出もうまくはまっていて楽しめました。しかし、エミリアとして生まれ変わり、4年後にリタと再会してからが失速。何をいいたいのかよくわかりません。
エミリアはジェシーと2人の子供を捨てたことを後悔して、自分の正体を隠してもう一度やり直せるようリタに協力を求めます。さらに、犯罪に巻き込まれて行方不明になった息子を探す母親をあわれんで、行方不明者探しのNPOを立ち上げます。このへんがそれぞれとってつけたようなエピソードで、だから、何?という感じ。
自分が性転換したことを家族にいえないというのが主筋の一つだけど、それを押し通そうとしたため、終盤は単なるごたごたになってしまった感じ。人間だから選択を間違えることはあるのだけど、せっかく性同一性障害をテーマにしているのに、なんか物語上のご都合でそういう家族とのごたごたがでたとしか思えません。別にギャングに追われて整形したのでも同じ話になるわけで、なんでわざわざ性同一性障害にしたのか、批評家筋からの受け狙いだったのでしょうか。
失踪人探しのNPOもそうで、大半は遺体も見つからないから遺族と結びつけようというのだけど、でも、そもそもの原因はマニタスにあるわけで、これまたとってつけたような善人ぽさをつけてるだけと冷ややかに見てしまいました。リタのダンスシーンで、メキシコの上流階級が腐っているというのを長くやるのですけど、これもそのダンスの場面だけで後につながりません。なんか、批評家に受けそうなエピソードを羅列しているだけの感じ。
ガスコンは自身もトランスジェンダーなのをいかしているのか、ガスコンとエミリアのまったく違う二人を楽々と演じているのはよかったけど、実質的な語り手と言えるゾーイ・サルダナはまだしも、セレーナ・ゴメスってそんな特筆すべき演技とは思えませんでした。カンヌでアンサンブル女優賞を受賞したのも、内容とは別に批評家に受けたからなのかな。今年のオスカー有力候補のなかでは一番、ささらなかった。
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