作品情報 2023年インド映画 監督:ベンキー・アトゥルーリ 出演:ダヌーシュ、サムユクタ、サムティラカニ 上映時間134分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿ピカデリー 2025年劇場鑑賞138本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください

にほんブログ村
【ストーリー】
1990年代、インドでは教育が民営化され予備校や私立学校が力をつける一方、公立高校は資金不足で閉鎖されるところもでてしまい、良い教育を受けるにはカネが必要となった。こうした風潮が社会問題になったことから私立学校協会会長のティルパティ(サムティラカニ)は、閉鎖されている田舎の公立高校に使えない教師を送り込んで形だけお茶を濁すことを考える。
田舎に送られたほとんどの教師が仕事をしない中、野心に燃える教師バーラ(ダヌーシュ)は赴任先の高校の美人教師ミーナクシ(サムユクタ)の協力を得て、生徒たちに学問の大切さ、楽しさを教える。みるみる成績のあがったバーラに大して、大金をかけなければ成績が上がらないことを売り文句にしているティルパティは妨害工作をはじめ…
【感想】
舞台は2000年前後なんですけど、インドでこんな教育問題が起きていたとは知りませんでした。インド映画らしく、なぜかバーラは腕っぷしがめっちゃ強くて、ティルパティが雇ったチンピラを片っ端からぼこぼこにしていくのですが、それよりも、教育の大切さを訴えるシーンが切実。「教育は売買できるのではなく、神からの施しでみんなで分け合うもの」という姿勢は心を打ちます。拝金主義に染まっている今の日本の教育界にも通じる問題点を描いています。
歌や踊り、そして、主人公カップルの恋愛模様はともかくとして、バーラの授業がどうして生徒たちの学力を引き上げたのかとかご都合主義はたくさんあるのだけど、貧しい生徒の親が家計のために子供を学校にこさせないとか、女性はべんきょうしなくていいとか、カーストの下位の生徒と同じクラスにはなりたくないと反対する生徒など、インドの社会問題を盛り込んで、それを劇中で乗り越えているのが本国でヒットした理由なんでしょう。どうせこうなると思いつつも、クラスメイトが団結したシーンは、思わず胸が熱くなりました。
同様のインド映画では「スーパー30 アーナンド先生の教室」がありますが、あちらは後半、完全にアクションよりになったのに、本作はアクションはあくまでもスパイス。それより徹底的に子供たちにとっての勉強することの大切さと、親が子供を思う気持ちの重要さを訴えているのが印象的。また、現代のシーンから始まって、20年前の回想につながるというのも興味深く、現代のシーンの謎のギミックが20年前にこんなふうな意味があったのかと驚かされる脚本もここちよい。それから、音楽のセンスも良くて、インド映画にしては短い上映時間に収めるための効果がありました。
また、清濁併せ呑むというほどではないですけど、何が一番大切かを見極め、そのためには妥協もするというのはインド映画としては非常に意外。単純に悪役をぼこぼこにやっつければすむような社会課題ではないのですよね。キャラクターも魅力的であり、バーラのような教師と、共に学んだ学友がいれば人生は本当に幸せでしょう。また、サムユクタの気の強い美人ぶりもインド映画ぽいですが、本作にあっていました。エンドロールが途中で音楽が切れ、無音になるのはもったいなかった。
【2025年に観た映画の最新記事】