作品情報 2024年日本映画 監督:金子雅和 出演:華村あすか、葵揚、安田顕 上映時間108分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:横浜シネマリン 2025年劇場鑑賞162本
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【ストーリー】
1958年、山村に住む少年、ユウチャ(有⼭実俊)は林業を営む父ハルオ(足立智充)、病気で寝たきりの母アユミ(山田キヌヲ)、そして頑固者の祖母(根岸季衣)とひっそりと暮らしていた。折から山奥の開発が村の話題になるなか、ユウチャは町を訪れた紙芝居屋(堀部圭亮)の紙芝居で、山奥にある川の源流、青い泉をめぐる哀しい伝説を知る。
数百年前、村に住んでいた女性、お葉(華村あすか)は、山を渡り歩く木地屋の⻘年・朔(葵揚)と恋に落ちる。だが、里の住人と山の民は相容れぬもの同士。お葉の父常吉(安田顕)、木地屋の長(渡辺哲)ともに2人を別れされようとする。絶望のあまりお葉は泉に身を投げて死んだというものだった。ところが、お葉の涙のせいか、数十年に一度、川は大洪水を起こすという伝説があった。ユウチャは偶然、川でお椀を拾うが、祖母がいうにはそれを1人で泉に返しにいかなければ、悲劇は必ず起きるというのだ。バカバカしいとハルオは笑うが、ユウチャはそれを信じて…
【感想】
時代劇と言えども侍は一人も出てきません。また、山の民を扱う作品は時折あるけれど、木地屋に焦点を当てたのは初めて見ました。高度成長期直前の開発と合わせ、自然への畏敬、伝説の伝承などうまく交通整理をしてある作品であり、お葉の悲恋と、ユウチャの冒険というまったく違うストーリーをうまく結びつけています。
山の民が差別されるという印象がありますけど、彼らからすれば同じ場所に張り付いている里の民こそ愚かな存在でした。まったく相容れない両者の考えですが、それぞれ納得のいくもの。もう少しお葉と朔の関係を描いても良い気もしましたけど、どうしようもない運命に絶望するお葉の気持ちが痛いほど伝わってきます。常吉が娘の幸せを祈っているからこその行動が悲劇を呼ぶあたりもまたうまい。
1958年も今となっては時代劇のようなものですけど、ようやく日本が焼け跡から立ち直った時代。山奥の村ではまだまだ貧しい生活を送っていました。山の木を切って開発して少しでも豊かになろうという発想はある意味当然です。ユウチャの家は雨漏りがしていますし、アユミの薬代も得なければなりません。
しかし、まだ当時は古代から脈々と続く自然や伝承への畏敬が残っている時代でした。ユウチャが夜の山道や洞窟を一人で歩いて泉へと向かうシーンは、まだ幼い少年にとってどんなに過酷な冒険だろうとハラハラします。でも、彼もバアちゃんも、笑っていたハルオですら、言い伝えには真剣に向かっていたのです。また、お葉の幼い弟に有⼭実俊を起用していることで、より2つの時代のシンクロ性を高めました。このあたりもうまいとうならされます。
タイトルロールは華村でいかにも当時の村の少女という雰囲気をうまくだしていました。また、有山の時代をかけた演技は子役ゆえにこういうインディーズにはぴったりな感じだけど、最初は女の子かと思った。。安田、根岸、渡辺といったベテランもうまい感じで使ってました。葵はここでも坊主頭なんだと妙に納得してしまった。金子監督は前作のニホンオオカミを描いた「リング・ワンダリング」に続き、日本の自然や伝承とファンタジーテイストをうまく結びつけた作品で次回作が楽しみ。
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