2025年06月16日

無名の人生

 インディーズのなんとも独創的、天才的な発想にあっけにとられます。正直、意味の分からないところも多かったけど、とてつもないものを観たという気にはなりました。
  
 作品情報 2025年日本映画アニメ 監督:鈴木竜也 声の出演:ACE COOL、宇野祥平、大橋未歩 上映時間93分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2025年劇場鑑賞209本



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 【ストーリー】
 仙台のぼろ団地に父(声・宇野祥平)と暮らす少年(ACE COOL)。父はかつて人気アイドルだったが、業界を牛耳る男・白鳥(津田寛治)からの性的行為を拒否したため追放された過去があった。また、母は少年の目の前で交通事故で亡くなり、少年は言葉が出なくなってしまう。

 転校生のキン(田中偉登)と出会い、キンがアイドル志望だったため一緒にオーディションを受けて、天性の才能を見抜かれて白鳥の事務所に合格した少年。だが、それは彼の波乱万丈の100年の生涯の幕開けに過ぎなかった…

 【感想】
 20代だった鈴木監督がたった一人でApple Pencilを使って1年半かけてで制作した天才とも狂気とも言えるアニメーション。有名ラッパーや俳優を声優として起用していますが、セリフが無くて絵だけでみせるシーンも結構あり、正直、冒頭や終盤は何がどうなっているのかよくわからなかったけど、なんかすごいという小並みな感想で頭がいっぱいになります。

 ジャニーズ事務所問題を彷彿とさせる白鳥に関する話題がクローズアップされていますが、100年の人生のなかでは数年にすぎません。まあ、あれだけ大騒動になりながらも今やだれも語らず、旧ジャニーズのタレントがいっぱいメディアにでている日常で、こういう作品が作られるというのは一つのインパクトでしょう。動きの少ないシンプルなキャラデザで、モンタージュを使って少年アイドルができるさまはうすら寒くなりました。

 けれども、本作で取り上げている社会問題はそれだけでありません。冒頭の母親が老人の運転する車にはねられて亡くなっているのは、まさに今の社会問題。いじめもそうですね。また、監督が歌舞伎町でのバイト経験を基にしたホストやトー横キッズの闇という今風のものから、大地震、戦争、環境汚染といったワールドワイドな問題まで非常に幅広い、カオスのようです。しかも、それを無機質にまるで宇宙人が地球を観察するような淡々とした描写をするのでるから。

 監督のインタビューをみると、きっちりと脚本が完成してからでなくて、アニメを制作しながら次から次へと次の展開が産まれていったそうで、その行き当たりばったり感が、逆に妙なすごみを感じさせます。まだ、現代までは理解できましたけど未来パートになると、よくまあこんなことを思いつくなあとびっくりするような展開が次々に繰り広げられていくのですから。

 興味深いのは無名の人生と言っている割に、主人公はアイドルだけでなくその後の人生でも超有名人になっていること。しかし、主人公は正しい名前で呼ばれることは一度もなく、おそらく父親がせいちゃんといっているのは本名からきているのでしょうけど、あとはさまざまな呼ばれ方を他人からされます。また、超有名人になるのも本人が望んだわけでなく、人生流されるままの結果。多くの人が自分の名前を世間に売って有名になりたいと思っているのは真逆であり、そこにもシニカルなユーモアを感じます。

 ACE COOLは初めてなんですが、演出か作風を自分で判断したのかわかりませんが、感情に乏しいところが本作に非常にマッチしています。これは他の俳優も同様で、僕のお気に入りの中島歩が白鳥の部下役ででていますが、全然気が付かなかったほど。彼ら彼女らが本作にどういう経緯で出演して、どういう気持ちで演技をしたのかも知りたくなるところでした。
posted by 映画好きパパ at 06:16 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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