作品情報 2025年日本映画 監督:松居大悟 出演:池田エライザ、阿達慶、橋本愛 上映時間127分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマ港北 2025年劇場鑑賞214本
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【ストーリー】
2009年、尾道の女子高生、大槻美雪(池田エライザ)は夏休み直前に転校してきた園田保彦(阿達慶)と恋に落ちる。ところが、保彦は24世紀からやってきた未来人で、21世紀の尾道の高校生を描いた小説にあこがれて実際に来たというのだ。美幸は保彦が未来に帰る前に、彼からもらった不思議な薬で1度だけタイムリープを体験。10年後に行った美雪は大人になった自分と会う。大人の彼女は、自分が書いた小説「少女は時を翔けた」こそが保彦の読んだ小説だといい、大人になったら書くように約束させられる。
10年後、東京で小説家になった美雪は10年前からやってくる自分に会うため、久々に故郷へ戻って準備万端整えていた。だが、10年前の自分はこなかった。それどころか、新作として書いた「少女は時を翔けた」が盗作だと出版社から連絡がある。だれかが自分の歴史を変えたのだ。美雪は真相を必死で探るのだが…
【感想】
法条遥の原作は未読ですが、舞台は静岡のうえ殺人事件もあるようで、映画化で内容は変わったみたい。本作はあからさまに大林版「時をかける少女」にオマージュを捧げており、美雪の担任役はなんと大林版の重要人物だった尾美としのり。母親役はやはり大林の尾道3部作の「ふたり」のヒロインだった石田ひかりが起用されています。さらに「ラベンダーの香りがする」など、大林版のファンにとってはたまらないセリフもちりばめられているし、夏祭りの情景など尾道の街並みや景色は郷愁を呼び建てます。
美雪は保彦の記憶がある当時の同級生が怪しいと、自分なりに捜査を進めていきます。その同級生役が橋本愛、久保田紗友、倉悠貴、山谷花純、前田旺志郎、森田想と実に渋いキャスティング。20代の実力派が選ばれたという感じでしょう。彼ら彼女らは高校時代も演じており、池田と橋本は29歳で高校生を演じるには苦しいかと思いきや、説得力のある演技で見事、あの夏の高校生という役割を果たしていました。また、橋本は10年後の時の演技はすさまじくよく、ファッションやヘアスタイルともども、美味しい役柄です。
物語が進むにつれ、徐々に不穏な展開になり、本格ミステリーの謎解きっぽく、同窓会でクラスメイト一同が全員集まることで、真相が明かされて行きます。このあたりの展開は見事ですし、プロットが意表をつくというか、さすが上田脚本(原作もそうなのかな?)。タイムリープものは多数ありますが、まだこういう展開があったのかと驚かされました。「きさらぎ駅」が観ていて、GOGO!とテンションがあがる武闘派なのに対して、こちらは複雑なパズルを解く頭脳派という感じで、両方みられて良かった。
2009年の尾道というのはなんとも郷愁をさそう田舎で、まだスマホもようやく東京で出始めたころ。浴衣着て夏祭りにいって花火をみたり、ケーブルカーに乗ってデートを楽しんだりと、僕のようなおっさんでも懐かしくなるような青春の光景が観られました。
さらに、クラスメイト達のキャラもきちんとたっており、もちろん30人近く全員は無理にしても主要メンバーだけでなく、普段だったらモブっぽいクラスメイトまでしっかり役割があるというのもうまい脚本です。松居監督は「ちょっと思い出しただけ」や「くれなずめ」でもこういう青春時代をエモくかつ、淡泊に描くのはほんとうに上手だし、観ていて心が癒される作品でした。特に本筋とは若干離れていますが、同窓会後にみんながなんとなく帰れなくて、思い思いの格好で海辺の地べたに座るあたりは本当にうまかった。
さらに、大人の美雪の夫に篠原篤という意表をつくキャスティングにもうならされました。いやあ、これは中年の夢ですねえ。
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