作品情報 2023年アメリカ、イギリス映画 監督:ジャン=ステファーヌ・ソヴェール 出演:ショーン・ペン、タイ・シェリダン、キャサリン・ウォーターストン 上映時間125分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2025年劇場鑑賞243本
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【ストーリー】
ニューヨーク市消防局の新人救急救命士、クロス(タイ・シェリダン)はベテランのラット(ショーン・ペン)と組まされる。初出動は銃撃戦で重傷を負った男性の搬送。作業にもたついてしまい、ラットから「2週間もたない」と突き放される。
その後も、酔っ払いからひどい言葉を浴びせられたり、ギャングから銃で突きつけられたりと厳しい状況の中での任務は続く。精神的ダメージを受けながらもなんとか食らいつくクロスは次第にラットに認められる。ある日、前妻のナンシー(キャサリン・ウォーターストン)のもとにいる幼い娘、シルヴィ(オニ―・マセオ・ワトリントン)と面会に行くラットに付き添ったクロスは、ナンシーからラットも過酷な状況で精神がボロボロになっているとの話を聞く…。
【感想】
日本でも救命救急はドラマや映画の舞台になりますが、銃も麻薬も蔓延しているニューヨークでは救急隊員も命がけ。みんなが彼らに感謝するわけでなく、銃で脅されたり暴言を浴びたりしなければならないのだから、その苦労は半端ではありません。移民の町らしく、言葉がまったくわからないのに救命措置をとるというのもこれまたしんどい。
さらに、ベテランのラットは、9.11テロの時も出動し大勢の仲間が犠牲になりました。日頃のやすりで削り取られるようなひどい毎日に加えて、こんな過酷な経験があると、精神がどんどんやられていくのがわかります。ある意味、仕事に打ち込みすぎることで精神のバランスを保っているのですが、そうすると家族とは折り合えなくなるわけです。
よくあるベテランが新人を育てるというパターンと違い、本作ではベテランも新人もともに、あまりにも過酷な仕事でダメージを受けているというのがリアルな感じ。クロスもどんどんその精神的なダメージの沼へと引きずり込まれて行きます。救急車の視点で夜のニューヨークの街をひたすら回るカメラとサイレンのBGM、そして患者や家族の喚き声といった音声は、華麗に見えるニューヨークの裏側で、こんなに支えてくれる人がいることを気づかせてくれます。ギャングの飼っている犬にかまれた少年、DVで大けがをおった女性、HIVの母親が麻薬を打ってオーバードーズ中に起きた出産など次々に起こる搬送事案を、スタイリッシュ、スピーディーに描いているのもいい。
さらに、日本の職業倫理では信じられないようなことも、心が荒れ果てている救急隊では普通にあります。殺されそうになった犬を助けようとしたクロスのロッカーに、犬が閉じこめられるといういじめには唖然としました。このくらいは序の口で、人間の生死にまつわることすら、平気で行われます。アメリカの暗部というか、ニューヨークでは絶対に怪我したくないな。こういう人間や社会のリアルなひどさを知るには最適の作品で、エンディングでは亡くなった救命隊員たちへの献辞があります。
ショーン・ペンのしかめっ面の演技と、最初のやる気が空回りしているけどどんどんそんなラットに似てくるタイ・シェリダンの演技が良い。それから、消防署長役に往年のボクシング世界チャンピオン、マイク・タイソンが起用されていますが、全然気づきませんでした。
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