作品情報 2025年日本映画ドキュメンタリー 監督:松原文枝 上映時間99分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2025年劇場鑑賞263本
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【ストーリー、感想】
1932年、日本は中国東北部を侵略し、満州国という傀儡国家を立てます。日本から貧しい農民が大量に送り込まれ、出身地ごとに開拓団を作りましたが、開拓という名前とは裏腹に中国人の土地を安く接収したため住民からうらまれていました。
1945年8月9日、ソ連が日ソ中立条約を破って満州に攻め込みます。これに合わせて日本に不満を持つ中国人も蜂起しました。しかし、日本軍(関東軍)や満州国幹部は自分たちや家族の避難を優先させ、開拓団は置き捨てました。このため、終戦時に22万人いた開拓団のうち8万人が犠牲になりました。置き去りにされた子供が中国残留孤児となったわけです。
集団自決する開拓団も多い中、岐阜県黒川村(現白川町)出身者の黒川開拓団は攻め込んだソ連軍に数えで18歳以上の未婚女性15人を差し出すことで安全を図ります。ソ連軍の乱暴はすさまじく、15人のうち4人は性病などでそのまま亡くなりました。まだ10代の女性たちは「お母さんお母さん」と言いながらソ連兵に襲われたといいます。さらに、戦後、引き上げた後は彼女たちの犠牲で助かったにも関わらず、「汚らわしい」と村から追放されてしまい、接待要員に若い女性を差し出したことは封印されていました。当時のトラウマはひどく、90代になっても悪夢にうなされることがあるそう。
しかし2018年になってわずかに存命していた被害女性の声をくみ取り、黒川開拓団の遺族会が村にある「乙女の碑」という記念碑に、当時の悲惨な状況の説明文を掲載します。その一連の流れを追ったドキュメンタリーです。
戦後80年たち生き証人が次々と鬼籍に入る中、まさに今作らないともう間に合わなかった作品であり、歴史をきちっと次の時代に伝えようとして、つらい体験を証言する被害女性らの決意には感動を覚えます。また、日本人が被害者であるという意識だけでなく、加害者であるということもきっちり伝えているのはすごい。日本の戦争映画はどうしても被害の部分にクローズアップしてしまいますから。
犠牲者の遺族が語ってましたが、黒川の出来事は日本の縮図であり、戦争の犠牲は一番弱い女子供にいくのに、その責任はだんまりというわけです。そもそも満州国の幹部で東条内閣の大臣を務めたのが岸信介。孫の安倍晋三氏が岸氏のことを敬愛していたことでもわかるように、現在の日本政治にそうした流れはまだ残っているわけです。とにかくしんどいけれど、観なければいけない作品でした。
黒川開拓団の被害女性の孫が、おばあちゃんはひどい目に遭っても自決しなかったから両親も自分もこの世に生まれ出たんだとインタビューで語っていたのが印象的。とにかく敗戦で弱い者だけがひどい目にあうということが二度と起きない日本にしなければならないと深く心に刻み込まれた映画でした。
【2025年に観た映画の最新記事】


加害者、被害者を言ったら乙女の方自身、多くは親兄弟、夫が加害者である?と思われ、私は感動とか必見だとか全く思えません。加害者はソ連軍です。
日本軍と当時の政府、満州国幹部に重い責任があるのはもちろんですが。
ドイツに侵攻してナチスを倒したソ連兵がその帰路、ドイツの女性を蹂躙しながら帰還したと、NHK『映像の世紀』で知りました。その歴史を受け、生存している女性たちに公に証言して歴史の証人にならないかと(何らかの団体?が)すすめたが「そっとしておいて欲しい。」と答えたそうです。お気持ち分かります。もう10年くらい?前の話。
当時か戦後か、スターリンは戦ったソ連兵に褒美があってもいい、と言った事も聞きました。ドキュメンタリーかニュースで。
映画好きパパさんはジャーナリストなので、伝える事が大切との思いが強いでしょうが、日本の中で被害者加害者言ってどうなの?という違和感があります。黒川村の乙女の方の悲劇の加害者はソ連兵です。
そこらへんについてはロシア軍がいかに鬼畜化など映画でも丁寧に触れています。
また、伝えることの重要性についての議論も当事者の間でなされています。
ご覧になれば違う感想になるのではないでしょうか。
実はコメントを書きながら「映画見てないのにどうなの?!」と考えて迷ったけど、エイッと投稿してしまいました。
動画の中京テレビのドキュメンタリーを見ました。ハルエさんの強い意志と気丈さ、整然と語る内容(全て正しい)に違和感が薄れました。言わされたのじゃなく、亡くなった友の為にも何年経ってもどうしても訴えたかったと。戦後、村の人の心が動いたのも分かります。
乙女を差し出した選択と自決、生か死か、究極過ぎて怖い事です。戦争の恐ろしさ…。敗戦国の悲劇は歯牙にもかけられない(と思う)のも悲しい。軍人、市民多数の死者を出した自国で加害者加害者言うのも…辛い気持ちになります。
また長くなってすみません。ジャンルを問わない映画鑑賞の幅が広すぎていつも感嘆します。偏りがない!にも程がありますね。
ぜひぜひ、機会があれば本作をご覧くださいませ。
戦争の加害と被害の複雑さ、被害者の無念などが伝わってきます。
今後もさまざまなジャンルの作品の感想を書いていきますので
引き続きよろしくお願いしまうs。