2025年10月04日

テレビの中に入りたい

 アメリカの若者の間でカルト的な人気となった作品。生きづらさを抱えたティーン2人を軸に、テレビの中の世界が現実を浸食しそうななんとも不思議なテイストでした。特に終盤の解釈は僕の手にあまりました。A24らしいユニークな雰囲気はそれだけで入場料のもとはとれます。

 作品情報 2024年アメリカ映画 監督:ジェーン・ショーンブラン 出演:ジャスティス・スミス、ブリジェット・ランディ=ペイン、イアン・フォアマン 上映時間102分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞293本




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 【ストーリー】
 1996年、内向的で友達もおらず生きづらさを抱えていた中1の少年、オーウェン(イアン・フォアマン)は、たまたま出会った2つ年上の少女マディ(ブリジェット・ランディ=ペイン)は、熱心に「ピンクオペイク」というドラマの本を読んでいた。


 「ピンクオペイク」はイザベル(ヘレナ・ハワード)とタラ(リンジー・ジョーダン)が不思議な力で魔物と戦う物語。しかし、放送時間が夜の10時半からのため、オーウェンの家では見られなかった。マディは自分の家に見に来るように誘う。それから10年以上たち、大人になったオーウェン(ジャスティス・スミス)は、ふと配信で「ピンクオペイク」を見直すと…


 【感想】
 米国版ウィキペディアによると、ショーンブラン監督はトランスジェンダーであり、アイデンティティの不安などを寓話的に描いたとあります。予告にもありますが、マディは同性愛者を広言していますし、オーウェンは「テレビで育った」といって、マディの家に泊まりに行く関係になったにもかかわらず、性的な興奮は感じていないアセクシャルのようです。


 ただ、寓話としてのピンクオペイク、そしてそれを熱心に見るオーウェンとマディの姿が良く出来過ぎていて、トランスジェンダーをメインテーマにしているとは気づきませんでした。それより、アメリカで生きづらさをもった人たちの大変さや青春期特有のアイデンティティの揺らぎ、自分の内面つまり本当の自分を殺してまで生きる人生にどんな意味があるのかの悩みと言った方が受け取りやすい。


 さらに、後半はオーウェンが大人になるのですけど、この設定がよくわからなかった。大人になっても子供時代のダメダメさを受け継いでいる一方、このテーマなのになぜティーンで終わらせずに大人の状況を描いたのかがわかりませんでした。テレビの中に入りたいとはうまい邦題ですけれど、現実でうまく生きられないから、テレビの世界と自分たちを一体化するってティーンならまだしも、大人になってまで突きつけられると、やはりちょっと変な感じがしてしまいます。ただ、これは僕が年をとった証拠で、若者から見ると、まだそういう面もあるのかな。


 日本語でも本作を考察するサイトがいくつかあるけれど、どれもあまりしっくりきませんでした。深読みしないと理解できないという作りは、NOT FOR MEなところもあります。ただ、予告編にあるような全体的に暗くけだるい雰囲気が流れる一方、原色のピンクのようなライティングはすごい幻想的。また、「ピンクオペイク」に登場する魔人のキャラクターも、ポップだけど寂しいという不思議なデザイン。とにかくなんとも揺蕩うような不思議な映画体験でした。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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