作品情報 2025年日本映画 監督:山田篤宏 出演:阿部寛、芦田愛菜、藤原大祐 上映時間125分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズゆめが丘 2025年劇場鑑賞295本
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【ストーリー】
地方の建設会社の部長、山縣泰介(阿部寛)は外回りから帰社したところ、大変な事態になっていた。Xに若い女性が殺される動画が“タイスケ”というアカウントから投稿され、過去の投稿で建設会社のグッズが写っていることから、山縣が犯人だとして大炎上しているというのだ。会社にはクレーム電話がじゃんじゃん入り、とりあえず帰宅すると家の前には迷惑動画配信者が殺到。警察を呼んで、自分が冤罪といってもとりあってもらえない。妻の芙由子(夏川結衣)は実家に帰らせる。さらに、物置に血まみれの体がおかれていたため、自分も家から逃げ出した。
動画を最初に拡散したのは大学で社会学を学ぶ住吉初羽馬(藤原大祐)だった。かれのもとにアカウント名さくら(芦田愛菜)という後輩から、逃亡中の山縣の行方を追いようと提案がくる。山縣の目撃情報がネットにすぐアップされるなか、2人は彼の行方を追いかけ…
【感想】
バイトテロのように本人に落ち度があるというなら理解ができますが、ある日突然、まったく身に覚えがなく炎上するとは、本当に嫌な時代になりました。現実世界でも、芸人のスマイリーキクチさんが、まったく関係ない少年事件の犯人と一方的にネットで騒がれ、大きな被害を受けたことが起きています。
ただ、スマイリーさんと違って山縣のグッズが過去のXの投稿にあるなど、ネットの特定班と呼ばれる人が、彼が犯人と誤解させられても不思議ではありませんでした。それだけに、自分が正義だと勘違いしている人が盛り上がってしまうのでしょうけど。そんなことにエネルギーを使うのだったらもっとまじめに人生を生きればいいのに、でも、迷惑系ユーチューバーは金儲けにもなるのだろうから、こういう炎上に突っ込んでいくのでしょうね。
実は本作でリアルかつ怖かったのは、SNSでの炎上だけでなく、大炎上した彼を取り巻く周囲です。山縣は自分に恨みを持つ人物は思い当たりませんでしたが、ネットでは彼の元同級生、同じ職場の人間といった人たちから悪口のオンパレード。リアルでも、後輩の塩見(浜野謙太)から、彼がいかに周囲に嫌われているかと伝えられます。昭和の人間の僕からすると、山縣の仕事の厳しさは当たり前なんでしょうけど、今の時代はそれでもパワハラと嫌われてしまうんですよね。これまた嫌な時代になったな。
犯人の動機はかなり苦しく、さくらの狙いなども演出面では観客を欺こうとしていますが、それはそうだろうとすぐわかってしまいます。ただ、そういう謎解きよりも、SNS、リアルで一斉に炎上した苦しさを体感するのが本作にふさわしいようにみえました。こういう困ったちょっと情けない2枚目は阿部寛の持ち味ですけど、最近、こういう役は少なかったので新鮮。また、芦田もこういうふうに使われるのかと、制作側がこれまでにない魅力を引き出しています。ストーリー、演出、俳優ともども今にフィットした話だし、なによりなんでも他人の責任にする風潮へのアンチテーゼなので、もう少し客入りがよくても良いのでは。
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