2025年10月07日

タンゴの後で

 1972年に制作され、高い芸術性と過激な性描写で問題となった映画「ラストタンゴ・イン・パリ」。ヒロインのマリア・シュナイダーに事前説明なしで、屈辱的な性行為のシーンが撮影され、彼女の人生は狂っていきます。芸術のためなら何でも許されるのかと思わされる一方、演出がぶつ切りで、マリアのことを知らないと結構分かりにくかった。


 作品情報 2024年フランス映画 監督:ジェシカ・パルー 出演:アナマリア・ヴァルトロメイ、マット・ディロン、ジュゼッペ・マッジョ 上映時間102分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2025年劇場鑑賞298本



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 【ストーリー】
 マリア・シュナイダー(アナマリア・ヴァルトロメイ)はフランスの有名な俳優ダニエル・ジェラン(イヴァン・アタル)が不倫相手のマリー・クリスティーヌ・シュナイダー(マリー・ジラン)に産ませた子。マリアがダニエルに会っている怒ったマリーと大喧嘩して、家を飛び出して学校を中退し、女優を志望することになる。


 端役ばかりだった19歳のマリアは、イタリアの気鋭の監督、ベルナルド・ベルトリッチ(ジュゼッペ・マッジョ)が監督し、アメリカの大スター、マーロン・ブランド(マット・ディロン)と共演する「ラストタンゴ・イン・パリ」のヒロインに
抜擢される。だが、撮影現場は地獄のようだった。さらに、過激な描写は批評家から評価される一方、イタリアではわいせつ映画として上映禁止となり、マリアもポルノ女優呼ばわりされる。その後の仕事も恵まれず、次第に麻薬におぼれるようになり…


 【感想】
 #ME TOOの現代では考えられませんが、いかに撮影とはいえ本人に黙って過激な性交渉をやらせるのは当時でも犯罪では。しかも新人女優が大スターや有名監督にその場で逆らえるわけもなく、完成後の記者たちの取材に淡々と答える姿がなんともいたわしい。


 そこまでして過激なシーンに挑んだのに、その後のオファーは「ラストタンゴ」よりもレベルが低いのに、性的なアイコンとしてのものばかり。映画では描かれていませんでしたが、マーロンとベルトリッチはこの年のオスカー候補になっているのに、マリアだけ外されたというのも本人にはショックでしょう。さらに、カフェでコーヒーを飲んでいると見知らぬおばさんから「恥を知れ」とか怒られるし、これでは精神がやむのはあたりまえ。


 男に走るとともに、酒、麻薬とお決まりの転落コースにおちた彼女ですが、バイセクシャルでもあり、映画研究専門の女子学生、ヌール(セレスト・ブリュンケル)の献身的な愛情が最後の歯止めになってくれます。脇役メインとはいえ、映画女優として長く続けることができました。しかし、ベルトリッチもブランドも、彼女に最後まで謝罪をしなかったということが、当時のエリートの女性蔑視を体現しているようです。


 一方で、唐突にシーンが終わって次は数年後に飛ぶようなこともしばしば。ヌールにしても、結局、その後どうなったのか観客にはわかりません。しかも、シーン間に暗転をいれるという、なんともクラシックな手法のうえ、全体的に暗い画質でもあり、ちょっと眠くなってしまいました。


 アナマリア・ヴァルトロメイは「あのこと」に続いて、20世紀の男性社会によってひどい目に遭うヒロインを好演しています。男の僕が見ても、むかついてしょうがないマーロン・ブランドになりきったマット・ディロンもなかなかのものでした。
posted by 映画好きパパ at 06:12 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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