2025年10月07日

ブラックバック

 スティーブン・ソダ―バーグ監督がイギリスのNCSC(国家サイバーセキュリティセンター)という珍しいところを舞台にしたスパイ映画。会話劇、心理劇が中心でアクションはほとんどありませんが、渋い大人のサスペンスといったところです。


 作品情報 2025年アメリカ映画 監督:スティーヴン・ソダーバーグ 出演:ケイト・ブランシェット、マイケル・ファスベンダー、マリサ・アベラ 上映時間94分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ日比谷 2025年劇場鑑賞299本



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 【ストーリー】
 NCSCのエリート諜報員、ジョージ(マイケル・ファスベンダー)は上司のミーチャム(グスタフ・スカルスガルド)から機密漏洩の調査を命じられる。テロリストの手に渡れば社会が大混乱になる画期的なソフトが、内通者によって盗まれたというのだ。


 ミーチャムは5人の容疑者を名指しする。ジョージの部下のジェームズ(レジェ・ジャン・ペイジ)、ジェームズの恋人で組織の精神科医のゾーイ(ナオミ・ハリス)、ジョージの旧友で事件担当捜査官のフレデリック(トム・バーク)、フレデリックの妻で組織の衛星画像担当者のクラリッサ(マリサ・アベラ)、そしてジョージの妻のキャサリン(ケイト・ブランシェット)だ。ジョージは自宅で手料理をふるまうホームパーティを開き、容疑者たちを招いてだれが犯人か見極めようとする。一方、ミーチャムが謎の死を遂げて…


 【感想】
 M16が舞台かと思いきやNCSCという初めて聞く組織。サイバーセキュティ担当部署は日本にもあるのだけど、NCSCは暗殺まで手掛けているのでどこまで本当なんだろう。監督がソダ―バーグ、脚本がジュラシック・ワールドやミッションインポッシブルのデヴィッド・コープだけあって事前には豪快な映画と思っていましたが、本編には派手な部分はほぼありません。単なるスパイ映画ではなく、3組のカップル間の疑心暗鬼や夫婦愛といったところに踏み込んでいるのが異色。


 スパイ組織は機密漏洩防止のために組織内部で結婚、恋人を作ることが多いそうで、ブラックバックというのは相手に答えを教えたくない場合にいう「機密だ」という言葉のよう。例えば、「何しにスイスに行くの?」「ブラックバック」といった感じ。夫婦や恋人同士で秘密があるのは普通でしょうけど、それが国家機密というのは異常な世界。そこでの人間関係は本当に奇妙で興味深い。


 また、スパイは心理戦の名手であり、相手の動きの何手も先を読みます。配偶者や恋人への愛が真実なのかフェイクなのか、先読みする行動もそれによって左右されるというのがいかにも人間臭い。また、組織が普通のオフィスのようで、アメリカ映画の大企業の会議室のようなところで作戦が話し合われる一方、本当の機密は池に浮かべたボートで釣りをしているふりをしながら打ち合わせをするというのも、リアルっぽくて面白かったです。ホームパーティも自宅リビングの長テーブルで食事を味わうという感じで、これまたスパイ映画というよりビジネス映画をみているよう。余計なエピソードを一切排して90分強に収めているのもうれしい。 


 ファスベンダーとブランシェットはさすがの存在感。後輩や部下たちが、2人を理想のスパイ像として観るのも納得です。アメリカ映画ですがイギリスが舞台ということで、特にファスベンダーの高級そうなスーツや釣りに行くカジュアルでも渋い格好をしているのがいい。脇役もマネーメイキングではないものの、洋画ファンにはおなじみの顔ぶれを揃えており、だれが内通者かハラハラしながら堪能できます。また、組織のトップ役にピアース・ブロスナンが起用されており、ジェームズ・ボンドが年を取って出世して内勤に移動したのかと思ってしまいました。派手さを期待すると肩透かしですが、人間心理を描くのは上手で、知的ゲームを観客も楽しめます。イギリスでは魚の活け作りが違法とか、うそ発見器のごまかし方とか、しょうもないトリビアも増えました。 
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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