作品情報 2025年日本映画 監督:竹馬靖具 出演:福地桃子、寛一郎、中川龍太郎 上映時間97分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞393本
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【ストーリー】
渡辺香里(福地桃子)は他人に恋愛感情も性欲も抱けない体質で、それゆえに周囲に溶け込めなかった。唯一、彼女のことを理解したのは母の遺産整理を依頼した弁護士の鈴木健流(寛一郎)だった。健流は香里の体質を理解した上、婚約する。だが、入籍の直前、健流は自殺してしまう。
自殺の理由がわからない香里は、小説家の中野慎吾(中川龍太郎)のことを、生前の健流が親友だったと話していたのを思い出し、会いに行く。最初はけんもほろろだった中野だが、香里の提案にのって、健流の亡くなる直前の軌跡を一緒にたどることになり…
【感想】
作品内では名言されていませんが、香里はアロマンティック・アセクシャル(なぜかホームページには明記されている)で、健流と中野は深い恋愛をしていたのでしょう。カミングアウトしていない健流は、母親(筒井真理子)や世間を欺く駄目の偽装婚を香里としようとしており、肉体関係のない友達婚みたいなことを想定していました。しかし、彼の自殺は観客もある程度、動機を想像するしかなく、互いに理解しあっていたという香里にとってもショックだったのでしょう。
一方、中野は沙月(朝倉あき)という、勝ち気で頭の良い妻がいます。中野がバイセクシュアルなのか、それとも沙月とも肉体関係を結んでいないのか判別がつきにくいですが、中野自身は香里にカミングアウトしていないため、最初は3人の関係がなんとも奇妙なものに見えます。しかし、そんな奇妙な関係も含めて人間は生きているわけで、自殺という生命のはかなさの象徴も含め、人間が生きる意味とは何かということも突きつけてしまいます。
中野役の中川龍太郎は映画監督で、彼のアイデアをもとにこの作品は作られたとか。アロアセを取り上げる作品もぼつぼつでてきましたが、自分の性的な体質と世間とのギャップに一番苦しんでいるようにみえるのが本作であり、それはアロアセよりも世間では知られているゲイも、まだまだ周囲に自分をさらけ出せない孤独を抱えているのでしょう。この孤独な人同士が出会って癒されたと思いきや、実は結局孤独のままだったというプロットは、非常に残酷ですがそれゆえに非常に美しく感じました。
福地桃子の何もかもあきらめたような独りぼっちの孤独の表現はすさまじくうまい。若手女優で、リアルにこのような複雑な心理描写をできる人は他に思い当たりません。また、俳優が本業でない中川の起用がアクセントとなっており、彩度を落としてとにかく突き放して静かな本作のなかでは異色な存在になっています。また、香里の会社の後輩で、恋多き女である篠塚真悠子役の兒玉遥が女性のいやらしさとさみしさを体現した演技をしており、アイドル上がりだとなめていました。出番はわずかだけど、雰囲気がけたちがいの筒井真理子も含めて、印象的な役柄が多かったのも特徴。
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