作品情報 2025年日本映画 監督:児山隆 出演:南沙良、出口夏希、吉田美月喜 上映時間119分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:新宿ピカデリー 2026年劇場鑑賞25本
【ストーリー】
茨城県東海村の工業高校。朴秀美(南沙良)はクラスで孤立した存在で、家庭も父親(テイ龍進)がDVをフルって崩壊している。夜、人通りのない駅まで仲間(黒崎煌代)たちとラップバトルを繰り広げるのが唯一の息抜き。
クラスのカースト上位で陸上部のエースの矢口美流紅(出口夏希)も、陽キャに見える外見とは裏腹に家庭環境は破滅的だった。母親(安藤裕子)が夫の自殺を契機に精神がおかしくなったのだ。そして漫画オタクの岩隈真子(吉田美月喜)。後輩の藤木漢(羽村仁成)と漫画を描いて雑誌に投稿するも落選ばかり。ある日、秀美はあこがれのDJ佐藤(金子大地)から、特別にレコーディングをしてやると誘われるのだが…
【感想】
いかにも健全な青春映画というビジュアルとは裏腹に、閉鎖的な街で家庭は崩壊、貧困家庭で低学歴と先行きの見えない女子高生3人が必死でもがくさまから映画はスタートします。序盤はスローテンポで説明的な部分が多いと思いきや、秀美が第四の壁を破るというメタ的演出を突然入れたりして、おやっとおもったところで、タイトルがドーン。いやしびれますねこの矯めてから一気に吐き出すところは。
秀美にとっては唯一の救いといえるラッパー界で尊敬すべき男が実はクズだった。まあ、偏見かもしれませんが、こういうクズな大人はどこにでもいそうなんだけど、やられっぱなしじゃないというのが令和の女子高生らしくていい。
一方、スクールカーストの上位にいた美流紅は授業中、旋盤で小指を切り落としてしまったことから、あっという間に転落します。しかし、外面はポジティブなまま。カースト上位というだけで彼女を憎み、ひがんでいた秀美と真子が、ある晩の出来事で親友同士になるというのも、青春でこれまたいい。
村を捨てて卒業後は東京に行きたい3人は、秀美の提案もあり予想もつかない課外活動を始めます。このへんネタバレをしらないほうが面白いのだけど、お仕事映画としても、部活再建映画としてもテンポがよく、また、タイトルがゴダールの映画からとっているけれど、ヨーロッパ映画のようなおしゃれな章仕立てというのがまた冴えている演出です。
なんだかんだで迎えたクライマックスは、まさにカオス。そしてラストカットまでドキドキワクワク感がたまりません。よくある上っ面の友情、努力といった青春映画に正面から喧嘩を売る格好良さはすさまじい。僕も美流紅に罵倒されたくなりました(笑)。
秀美がラップとハードSF、美流紅が映画、しかもゴダールなどアートスティックなやつ、真子がこれまたディープな漫画好きなので映画には引用、小ネタがあふれています。僕はゴダールとかは履修していないので、体験していればもっと楽しめたんだろうな。また、秀美のラップの良さは僕にはピンとこなかったけど、田舎の女子高生の鬱屈が込められているから、プロ的な巧さとは違う、演歌の怨念のようなものを感じます。
また、ここまでくそみそに言われている東海村がきちんと支援しているのも笑えます。完成した作品を見て怒ったりしないのだろうか。Xではちゃんとリツイートしてるけど。そして、東海村だからこそ物語にあっておかしくない原発事故や原爆といった重いテーマもさらりと盛り込んでいるのも現代的ですばらしい。
南、出口、吉田、羽村、黒崎とこれからの日本映画界を支えるだろう若手が男女問わず出ているのも素晴らしい。特に出口はこれまでのお嬢様的、クラスの中心的役柄とみせかけて、すべてに勝利する新しい役柄で、彼女にとってエポックメイキングになったのでは。また、児山監督の出世作「猿楽町で会いましょう」の主役だった金子の使い方もお見事。児山監督の金子への信頼が伝わってきました。ワンシーンだけの池田良も最高にはまっていた。パンフレットは小型の文庫のよう(でも1200円)というのにはびっくりしましたけど、装丁も工夫してあって読み応えがありました。
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