作品情報 2022年フランス映画 監督:オリヴィエ・トレネ 出演:ルー・ドゥ・ラージュ、ラファエル・ペルソナ、イザベル・カレ 上映時間:120分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2023年劇場鑑賞156本
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【ストーリー】
1989年、アムステルダムの音楽学校でピアニストを目指していた17歳の少女ジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)はベルリンの壁崩壊のニュースに興奮したクラスメートと、ベルリンに行ってみようと盛り上がる。だが、部屋にパスポートを忘れてしまいバスの出発時間に間に合わなかったジュリアと、無事出発できたジュリアは運命が分岐してしまう。
数年後、国際ピアノコンクールの直前、ジュリアは本屋で店員とぶつかってしまい、居合わせたイケメンの大学院生ポール(ラファエル・ペルソナ)に落とし物を拾ってもらう人生と、拾ってもらわない人生に分岐する…
【感想】
映画では3回の運命の分岐があり、4通りの人生が見られます。他の同種の作品と一番違うのは、4種類の人生とも晩年までフラットに見られるということ。「エブエブ」のように中心となる人生があり残りの人生が手伝いにくるとか、テレビドラマの「素敵な選TAXI」のように、失敗した人生をもう一度やり直すということはありません。4種類の人生はみんな価値あるものでした。
4通りの人生では、国際的なピアニストになる運命もあれば、何もかも失って場末のウエイトレスをしているケースもありました。ほんのちょっとの運命の分岐でこれだけ人生に差がつくというのは驚きですが、一見、悪いようにみえる人生にも良い出来事はあるし、逆もしかり。どの人生が正解ということではなく、運命のいたずらでさまざまな選択肢はあるけれど、どの人生になろうとしっかり、前向きに生きていこうよということがよくわかります。
4通りの人生とも、普通の人でもありそうな喜びや悲しみがまっています。また、両親(グレゴリー・ガドゥボワ、イザベル・カレ)との関係や恋愛、結婚相手も変わってしまいます。それぞれ、あの時に別の人生だったら幸せだったと思うこともあったでしょう。でも人生万事塞翁が馬ということわざがよく理解できます。
特に僕のような50代で人生の折り返し点を過ぎた人間からすれば、この映画の運命は残酷でもありエモくもあります。学生時代に好きだった人を何十年ぶりに偶然見かけたときに気づくか気づかないかなんて、僕の実生活でも起きてそう。また、すぐ両親と仲直りできるとおもったのに、すれ違ってしまう人生も、人間関係ってこんなに偶然に左右されるもろいものかと実感します。
ピアニストが主人公ということでクラシック曲が流れますが、リストなどそれほどメジャーでないけれど美しい選曲の数々。また、一流ピアニストのゴージャスなドレスから、生活に疲れたウエイトレスのくたびれたシャツまで、登場する人生によって同じ女優かと思えるほど、ファッション、ヘアスタイル、そして雰囲気が違うのも驚き。同時に4つの人生を10代から80代まで一人で演じきったルー・ドゥ・ラージュの演技力にも驚きます。また、4つの人生の交差がシームレスに、例えばジュリアが乗ったバスが出発するカットがそのまま、乗り損ねたジュリアが窓辺から見つめているカットになるなど、演出も非常におしゃれ。上映館が少ないのがちょっともったいない気がする傑作でした。
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