作品情報 2023年日本映画 監督:稲葉雄介 出演:染谷俊之、吉田美月喜、立川かしめ 上映時間108分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2023年劇場鑑賞261本
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【ストーリー】
コロナ禍で休養中の俳優、日吉真英(染谷俊之)はかつて祖父母が住み、今は無人となっている伊豆の農村で農業をしながら時間をつぶしていた。ある晩、兄弟のように育った幼馴染の鈴木竜(立川かしめ)がやってきて驚く。竜はある事件で逮捕され、冤罪を訴えていたが弁護士との面会中に脱走してきたというのだ。
とりあえず一晩は泊めたものの、いくら親友とは言えども手配犯をかくまったら自分も逮捕される恐れがある。とりあえずカネを渡して出て行ってもらったが、そこに東京から姪の夕起(吉田美月喜)が訪ねてくる。事情を知らない彼女は竜と意気投合してしまい、真英に泊めてあげようと提案してしまい…
【感想】
主要登場人物は3人で、ほとんどが日吉家の農家もしくは畑という演劇っぽいシチュエーション。ただし、説明セリフは極力排して登場人物の表情を見落とさないようにしないとなりません。これは観客に明かすだろうという場面も、そうしなかったのにはちょっと驚きました。
また、8月の暑い数日間なので、うるさいほどのセミの声や照りつけるまぶしいほどの日光、畑の周りの雑草の山など、日本人の原風景に触れるような美術がいい。麦茶を飲んだり、布団を畳んだりという日常をきちんと積み重ねていく様子を丹念に映し出しているのも上質な映画だと感じさせられます。
真英と竜は幼いころに一緒に暮したことがあり、一緒に夕起の名付け親にもなったという親友同士。大人になって真英は俳優として成功し、一方、どんくさい竜はなにをやってもうまくいかないという差が出るものの、久しぶりに会ったら子供のころの関係にすぐ戻ります。しかし、社会的立場を考えるとかくまい続けることはできない。さらに、口は悪いけどまっすぐな夕起を傷つけるわけにもいきません。真英の揺れる心理は説明セリフがなくてもこちらに伝わってきます。また、19歳だけどすでに人生に敗れ始めている夕起にとっても、自分の名付け親で年の離れた兄のような存在の2人への思いは複雑なもの。もちろん、恋愛ではないのだけど家族というか親友というか、若いゆえに突っ走るところも含めて応援したくなります。
一方、竜はぼさっとして何を考えているのかわかりません。というより考える能力がないから窮地に陥り、これまで同様、真英の好意に甘えてしまうというのがまるわかり。観ていてイラっとするけれど、少年時代の友情もあるし、真英が簡単に切り捨てられないむずかしさも伝わってきます。
染谷と立川はこれまで知らない俳優だけに、余計に日常のリアルさみたいなのを感じられました。吉田は「メイへムガールズ」「あつい胸さわぎ」と主役級の出演が続いていますが、本作のじっくりした演出は勉強になったのでは。竜のどんよりぶり、夕起のみずみずしい肢体など各人へのカメラワークもうまく、インディーズなのに丁寧、上質さを感じさせられました。
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