作品情報 2020年中国映画 監督:シェン・ユー 出演:ワン・チエン、リー・ゲンシー、シー・アン 上映時間105分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャックアンドベティ 2023年劇場鑑賞324本
【ストーリー】
四川省の寂れた工業都市の女子高生シュイ・チン(リー・ゲンシ―)は幼いころ母のチュー・ティン(ワン・チエン)に捨てられた。継母とそりが合わず母のことを思っていたある日、突然、母が街に帰ってきた。
ダンサーの母の美しさ、ファッションのセンスの良さにすっかり夢中になるシュイ・チン。だが、母が戻ってきたのには理由があった。そして、それは彼女や親友のマー・ユエユエ(チョウ・ズーユエ)を巻き込んだ誘拐事件に発展し…
【感想】
幼いころに捨てられたものの、今の生活がみじめで自分を連れ出してくれると夢みていたシュイ・チン。理想のように美しく、活発だけど彼女には優しい母親があらわれて有頂天になります。母親のためなら何だってする。思春期の彼女が思い込んでしまうのも無理がありません。
一方、ユエユエはシングルファザーの父ラウマー(パン・ビンロン)からDVを受けています。もう一人の仲良しジン・シー(チャイ・イェ)は両親が都会の成都で商売をしていて豊かですが、一人暮らしをさせられて孤独を隠せません。まだ17歳の少女3人が家族関係に問題を抱えているのを見るのは心が痛みます。しかも、仲良しそうに見えて実はそうでもないというのが、女性の人間関係のリアルといってはなんだけど、女性監督が描いているのだからリアルなんでしょうね。
一方、チュー・ティンは若い外見のせいか精神的にもたいして成熟していません。自分のわがままが娘の人生にどんな影響を与えるかまるで考えていない。一方で継母のほうは目の敵にする。大人は子どもの模範であるべきなのに、そうでない大人が多すぎるというのが日本でもありそうでなんとも寂しい。さらに、中国の強烈な受験競争や、金持ちと貧乏人の格差も背景にしており、社会全体が子どもの幸福を考えていない不幸が浮き彫りになります。
映画の冒頭はチュー・ティンやラウマーが誘拐事件の通報に慌てて警察に駆け込むところから始まります。いったいどんな作品になるかとドキドキした次のシーンで3人の女子高生の日常に移ります。このあたりの流れが非常にスタイリッシュ。工業都市の工場や坂道、トンネルなども効果的に使われており、本作が長編デビューのシェン・ユー監督のセンスがきらりと光りました。それだけに、最後の中国政府のお約束がもったいなかったなあ。他の国映画だったら余韻のある終わり方になったろうに。
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