作品情報 2023年日本映画 監督:内田英治 出演:北村有起哉、円井わん、岩崎う大 上映時間108分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞262本
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【ストーリー】
転職して映画監督になるという夢を追いかけている野島浩介(北村有起哉)は、大学時代からの友人で今は著名監督になっている大沢祥平(岩崎う大)の助監督となった。次回作は、貧しいヤングケアラーだったが中学時代の父の死を乗り越えて学生起業家になった小原有紗(円井わん)の自伝。ベストセラーの映画化としてマスコミからも注目されていた。
だが、クランクインまで1カ月を切る中、野島は関係者から話を聞くうちに、小原の話は美談ではなく、父親にかかっていた保険金目当てではとの疑惑を抱くようになる。しかし、大沢監督やプロデューサーの橘(片岡礼子)は、映画を売り出すためにそのことに目をつむるように指示する。一方、映画作りにのめりこんでいく野島の家庭は崩壊寸前で、妻の幸(大山真絵子)、女子高生の娘の光(中心愛)との関係は最悪になっていた…
【感想】
映画業界の内情暴露というか、映画の準備ってこういういろんなスタッフが集まってくるというのは興味深かったですが、そもそも大前提としてドキュメンタリーでなくて、フィクションなんですから、野島がなんでそんなに真相にこだわるのかがよくわかりません。一応もともとは通信社の記者だったという設定なので、真相を追及したいということなんでしょうけど、それこそ社会人のとる態度なのかなと疑問をもってみてました。
著名監督とはいえ、インディーズで予算も厳しい作品。クランクイン1カ月前になって企画を白紙にしたら、違約金が発生して準備に邁進していたスタッフたちもただ働きになります。監督やプロデューサーが上から作品を守ろうとするだけでなく、スタッフの間でも不穏な動きが起きるというのもリアル。やりがい搾取といわれる映画界の暗部をさりげなく描いています。
ただ、リスクマネジメントの観点からすると、もしも、小原が保険金目当ての犯罪を犯していたら目も当てられないわけであり、野島は社会正義の追及という面もあったわけど、本人は意図せずにダメージコントロールをしようとしていたわけです。そのへん、橘や大沢が何も考えずに強行しようとしているのも、社会人としていかがなものかと思いました。
さらに、記者の経験をいかして関係者の証言を集め、小原にどんどん話をせまっていくところは主人公らしい。小原も、周囲の大人で唯一本音をぶつけてくる野島に一目置くようになります。そのうえで、野島がどのような決断をとるのか。ラスト近くまで見せないのはうまい。だいたい、実話ベースの感動をうたったマスコミの商品なんて、どれだけもっているかわからないわけで、内田監督はそうした面でもエンタメ界に一石を投じたかったのかも。
一方、家族関係では地雷を踏みまくりの野島。昭和生まれのせいかもしれませんけど、妻や娘と話し合えばいいのに、一方的に自分の意見を押し付ける。あるいは面倒くさくなったら妻に子供のことを押し付ける。同年代の男性の僕から見ても古臭い価値観だなと思いました。さすがに、光の反抗は大げさすぎる気もするけれど、昭和の時代に良くある家族を顧みない働き方を、令和の若い世代がどう見ているのかも興味深かった。こちらもラストはうーんという感じだけど、内田監督は寓話として描きたかったのかもしれません。
北村の困ったような顔をしながら、周囲の困惑を乗り越えて真相をつかもうとする歪んだ熱意はうまいなの一言。他に有名な俳優がでていないだけに、北村の存在感にすべてがかかっていました。円井に小原の中学生時代をやらせるのはちょっときついかなと思いきや、カメラワークの工夫でうまくみせていました。パパ活とかキャバクラの描き方はありきたりなんですけど、それも含めて、やりきれない思いにさせてくれる秀作です。
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