2025年08月05日

木の上の軍隊

 沖縄戦で終戦を迎えたのを知らずに2年間木の上に隠れ住んでいた2人の軍人の物語。驚いたことに実話(作中の名前は変更されてます)ベースです。井上ひさしさんの原案で、彼の死後に脚本が完成した演劇を実写化しました。


 作品情報 2025年日本映画 監督:平一紘 出演:堤真一、山田裕貴、津波竜斗 上映時間128分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズゆめが丘 2025年劇場鑑賞268本



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 【ストーリー】
 昭和19年、米軍の来週に備えて、沖縄・伊江島では陸軍の命令で空港建設が急ピッチで進められていた。現地で徴兵された新兵の安慶名(山田裕貴)や与那嶺(津波竜斗)は戦争が間近に迫っていると危機感が薄いのを見て、歴戦の指揮官の山下少尉(堤真一)は苛立ちを隠せなかった。


 やがて米軍の空襲が始まり、島民にも犠牲者がでる。そして翌20年、米軍が上陸して守備隊は壊滅。安慶名と山下はかろうじて、広大なガジュマルの木の上に隠れ、夜になると戦死した遺体から水や食料を奪ってしのいでいた。やがて日本は降伏するが、そのことを知らない2人はそのまま木の上に隠れ続け…


 【感想】
 さて、僕の観た郊外の劇場では、前の席にお母さんにつれられた小学生ぐらいの男の子が座っていました。映画では序盤に、地元住民が米軍の空襲や砲撃で死んでいくシーンがあるのですが、5歳ぐらいの少女が殺された瞬間、彼は一目散に劇場を出ていきました。しばらくして戻ってきたのですけど、戦争で自分より年下の子供も犠牲になるというのがどういうことか、強烈に印象付けられたのかなと思いました。
映画は総合芸術だし、テレビと違って閉鎖空間でみることもあり、ストーリー、視覚、聴覚とさまざまな情報が入ってくることあり、臨場感は半端ありません。まだ、そんなに映画を観たことがないだろう彼にとって、貴重な体験になったならば反戦映画を観に来た価値があったのではと勝手に思いました。映画だけでなくて他の観客の反応を観られるのも映画館での鑑賞のメリットですね。
 映画の方は前半のうちから、山田と堤の2人がメインとなる会話劇で、2時間以上も持つのかと思いきや、最後まで目が話せませんでした。伊江島でも貧しい農民出身の安慶名は、食べられる昆虫や植物を見つけてサバイバルにたけています。また、山下が拒否した米軍の残飯をあさることも平気で行います。戦闘行為になったらたたき上げの軍人の山下にかなわないでしょうが、大自然でのサバイバルにおいてはむしろ普通の農民のほうが強いというのが一つポイントでした。
 また、木の上の生活が長引くにつれ、当初、軍国主義の塊で島民にも乱暴していた山下が、米兵が捨てたエロ雑誌をみたり、故郷の宮崎にいる家族のことを安慶名に話したりと人間らしさをみせてくるのも見どころ。逆にいうと戦争中にあれだけ非人間的なことをしても、結局は普通の人間なんだという怖さを感じます。さらに、最後まで安慶名は山下のことを「上官」としかよばず、山下も「貴様」「お前」というので、近づいたとはいえ人と人との関係でなく、軍隊と言う組織の中の関係が切れなかったのも興味深かったです。


 山田、堤を除いたほとんどが沖縄県の俳優を起用。平監督は伊江島出身です。それだけに、単なるお涙頂戴にならない地元から見た沖縄戦の実情みたいものが伝わってきた気がします。映画ではふれてませんでしたが、戦後の2人の関係も一言あっても良かった気も。また、この手の映画では無駄に売れている女優を出したりしますが、本作では名前のある女性は安慶名の母親(城間やよい)ぐらいしか出ておらず、変な方向にいかないのも、真面目に撮っているという感じでした。美しい沖縄の風景は変わらないけれど、命も人も戦争でまったく変わってしまった、戦後80年にふさわしい、戦争とは何かを考えさせられる秀作です。


 山田、堤は減量して撮影にのぞみ、特に堤の鬼軍人の様子が天然の入った山田の演技との対比もあって印象的。また、演劇版の新兵役の松下洸平がナレーション、上官役の山西惇が農民役に出ています。僕は演劇を見ていませんけれど、こういう目配りも良いなと思いました。G指定のため犠牲者の遺体はきれいな姿ですけれど、子供も観られるという点ではこれで良かったでしょうね。


posted by 映画好きパパ at 06:00 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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