作品情報 2025年アメリカ映画 監督:HIKARI 出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理 上映時間 110分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ座間 2026年劇場鑑賞91本
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【ストーリー】
東京在住の売れない俳優、フィリップ(ブレンダン・フレイザー)は、レンタルファミリーというサービスを行っている会社の社長、多田(平岳大)から多めの報酬でスカウトされる。それは家族、友人、恋人などになりきるサービスで、フィリップは白人男性として採用されたのだ。
最初はとまどったフィリップだが、お受験をする小学校女子ミヤ(ゴーマン・シャノン・眞陽)の父親、白人と結婚すると家族に報告した女性、佳恵(森田望智)の国際結婚相手、忘れられた老スター、長谷川(柄本明)の取材をする外国人記者など、その時々の役柄になり切っていく。だが…
【感想】
家族にも友人にも恵まれ、レンタルファミリーなんて考えたこともない人が世の中の大多数でしょう。しかし、家族や社会の絆が薄れていくなか、お金を払ってでも人間関係を作りたいという人もいるわけで、その人たちの疎外感というのは想像以上なのでしょう。実際、僕もそのようなサービスを利用したことがありますし、恋人に特化したレンタル彼女を漫画、ドラマ化した「明日、私は誰かのカノジョ」は現代の世相をとらえた大傑作だと思います。
本作は、外国人という日本社会からある意味疎外されたフィリップが主人公であるところが面白い。レンタルファミリーは日本発祥のサービスで、韓国や中国にも広がっているそうです。これは、他人の目を気にしてしまう東洋人特有の感情があるのでしょう。そうしたなか、アメリカ資本(サーチライト・ピクチャーズ)製作で、監督も日本出身ですが米国滞在が長いHIKARIが取り上げたというのが興味深い。アメリカでもナショナルボードレビューの2025年の10本に取り上げられるなど評価が高く、孤独というのが世界的な減少になっていることが浮き彫りになります。
映画ではメインとなるエピソードは3つで、そのほかサブ的なエピソードがいくつもでてきます。メインエピソードもそれぞれ巧くできており、特に、依頼主であるミヤの母(篠崎しの)の容貌で、ミヤには本当の父親として接するよう頼まれたフィリップの苦悩は一番、僕に刺さりました。もともと心優しいフィリップですから、ミヤもすぐになつきます。しかし、結局はフェイクの関係。予告編で使われている、ミヤと一緒に光のアートミュージアム「チームラボボーダレス」にいったとき、ミヤが「これは美しいけどフェイク」というのにフィリップが「ふりをするのも悪くはないよ」と答えているシーンや、ミヤが「大人は何で嘘をつくの」というのにフィリップが「そのほうが楽だから」と答えるシーンなど、深く心に残りました。
佳恵と長谷川をめぐるエピソードも練られています。これら3つのエピソードで、時にはレンタルファミリーが人を救うこともあれば、むしろ傷つけてしまうこともあって、人間関係が一筋縄でいかないことを感じさせます。また、ミヤにたいして本当の父親のような感情を描いたり、長谷川の時は依頼人の娘(真飛聖)の希望に反してまで長谷川に感情移入してしまうフィリップの良い人ぶりも見どころ。彼にビジネスライクだった多田や先輩女性社員の愛子(山本真理)が感化されていくのもいい。特に愛子とのつかず離れずの関係は、すぐに恋愛に持ち込むハリウッド映画としては珍しく粋な感じです。
撮影は山田太一の息子で、アメリカで学んだ石坂拓郎。彼とHIKARI監督の日米双方の文化を知悉したおかげで、渋谷や新宿といったありふれた大都会もエキゾチックに見えます。一方で富士山のふもとを新幹線が通るシーンや、九州・天草の絶景など、西洋人が期待する日本の自然もあまさずとっており、絵柄も非常に楽しめます。フィリップが自宅マンションから、目の前のマンションで暮らす市井の人々を眺めるなど、印象的なカットも多い。
フレイザーはオスカー俳優のオーラを完全に打ち消して、善良な売れない役を好演していました。また、彼に引けを取らない演技を見せた子役のゴーマン・シャノン・眞陽が本当に素晴らしい。芦田愛菜の子役時代を想起しましたが、ゴーマンは英語と日本語の使い分けも完璧です。また、山本も日本の映画ではあまり見かけませんが、フィリップを支える先輩として時には厳しく、時には日本の女性をめぐるひどい状況をさりげなく見せるなど、複雑な役柄を演じ切っていました。平のノーブルさが見える映画をはじめ、脇役も完璧。レンタルファミリーの会社の疑似的な家族関係というのもほっこりします。世知辛い世の中だからこそ、多くの人に見てもらいたい作品です。
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