作品情報 2024年アメリカ映画 監督:マイク・フラナガン 出演:トム・ヒドルストン、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン 上映時間111分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:ローソンユナイテッドシネマみなとみらい 2026年劇場鑑賞174本
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【ストーリー】
世界各地で一斉に大規模な天災が起き、この世の終わりが近づいていると人々は絶望していた。教師のマーティー・アンダーソン(キウェテル・イジョフォー)は、街中やテレビなどで一斉に「サンキュー、チャック 素晴らしき39年間に」というCMが流れていくことに気づく。そこには眼鏡をかけた真面目そうな中年の男チャックことチャールズ・クランツ(トム・ヒドルストン)の写真が描かれていた。
この世の最後の日を元妻で今でも愛しているフェリシア・ゴードン(カレン・ギラン)と過ごすために、彼女の家に向かう途中でもチャックの広告は町にあふれていて、彼がいったい何者か疑問は深まっていく…
【感想】
3章に分かれて、第1章の主人公はマーティー。世界が終焉しようというのにパニックにも陥らず、淡々と日常をこなしながら、最後は人生で一番愛した人と再会しようとします。この描写が僕のツボにどんぴしゃでした。ハリウッド映画だから、大災害の様子をいくらでもスペクタルとして見せることも可能です。しかし、本作は劇中のテレビニュースの映像も、実際にある洪水や山火事の映像であり、登場人物のセリフでは世の中で死者が多数出ていることがわかりますが、死ぬ瞬間をはっきりと映し出す描写はありません。
最後の日にマーティーがフェリシアの家に行くまでに遭う葬儀屋の老人(カール・ランブリー)やローラースケートをする少女(ヴァイオレット・マグロー)もなんとも哲学的な感じ。また、結婚はすぐできるけど離婚は時間がかかるから、世界終焉の日にできないなんてセリフも印象的でした。何より、天変地異の後、ネットが遮断され、テレビも移らなくなり、そして穏やかに愛する人と向き合う時間があるという描写がなんとも切ない。人間である以上、死は必ずきます。そのときに、こんな穏やかな最後を迎えることができればいいなと思ってしまいました。
第2章はそれより以前、チャックがCMの中の登場人物ではなくて、実際に生活している人物として現れます。会計士で生真面目なチャックが、路上でドラムをたたいている女性(ポケット・クイーン)を観て、思わずとった行動。実際にこういうことが起こりうるのかわかりませんが、おカネとか物欲とか無縁の何気ない一日が、人生にとって最高の日の一つになるというのもこれまた理想的。スクリーンならでは楽しいマジックにはまります。
第3章はチャックの子供時代。両親を事故で亡くしたチャックは祖父母(マーク・ハミル、ミア・サラ)に育てられます。この祖父母がなんともチャーミングで、人間的な欠陥はある一方で、こんな老人になれたらなんていいだろうという思いでいっぱいになります。チャックが祖父母の愛情に満たされたことで、まっすぐ成長していく様子は心地よい。また、中学のダンス部のあこがれの先輩(トリニティ・ブリス)に東洋系の女優を起用し、なおかつ、真面目そうなチャックをリードする存在だというところも非常にぐっときました。僕自身、ダンスはまったくできないですけれど、体がむずむずして、ダンス映画としても最高級です。
勘の良い人はサンキューチャックの広告の謎について、途中から分かるでしょうし、僕も3章の途中で分かりましたが、なぞ解きを無理に押し付けないで、自然と分かる感じにしている演出もまた上品です。多分、若い人や健康な人には分かりにくい映画なのかな。僕みたいに不健康なおっさんにはどんぴしゃりはまりましたが。ちなみに、ワシントンポストは2025年のベストムービーに選び、ヴァラエティはワーストムービーに選びました。観る人によって好みがまったく違うタイプの作品だとしみじみ。それゆえ、万人にお勧めできる作品ではないですけど、他人の感想が気になってしまいます。
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