作品情報 2024年イギリス、アメリカ映画 監督:ニコラス・ハイトナー 出演:レイフ・ファインズ、ロジャー・アラム、アマラ・オケレケ 上映時間113分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2026年劇場鑑賞218本
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【ストーリー】
1916年、イギリスの田舎町ラムズデンの合唱団は、男性メンバーや指揮者が徴兵にとられてしまい人材不足に悩んでいた。団のまとめ役で市会議員のバーナードダックスベリー(ロジャー・アラム)は後任の指揮者にヘンリー・ガスリー(ラルフ・ファインズ)を選ぶ。ガスリーは音楽の才能は豊かだが戦前はドイツの楽団で指揮をとっていたうえ、ゲイだったため一部の市民からは嫌われていた。
ガスリーは前例にとらわれずソロ用のオーディションを行い、ソプラノには黒人看護師のメアリー(アマラ・オケレケ)を抜擢する。一方で、当初予定していたバッハのマタイ受難曲はバッハがドイツ人ということで脅迫がきたため、イギリスを代表する作曲家、エルガー(サイモン・ラッセル・ビール)のオラトリオを題目として選ぶ。さらに男性のソロに右腕を失って前線から帰国したクライド(ジェイコブ・ダッドマン)を選ぶが、元の曲の主人公が老人だったため急遽クライドに合わせて、戦争で死傷した兵隊たちにささげる曲に構成を変えるのだったが…
【感想】
クライマックスの合唱シーンに入るまでは、町の人々の普通の生活やガスリーの厳しい練習風景が淡々と描かれます。普通の生活には徐々に戦争の影が落ちてきます。政府は今年中にイギリスが勝利すると喧伝して住民の多くは信じますが、クライドのように地獄の現場を見てきた人たちはそんな政府の嘘を信じません。かといって、敗北主義的な発言もできず、ただ、哀しそうな笑顔を浮かべて黙って聞いているだけ。クライドを中心にしたらより反戦が打ち出せたのにと思いました。
映画は群像劇のような感じ。ドイツに多くの友人がいてドイツ軍が被害を受けたニュースにも複雑な思いをするガスリー、息子が戦死してその悲しみを合唱団の仕事にぶつけるダックスベリー、救世軍の看護師として寄付金を集めて回るメアリー、徴兵される前に彼女を作って童貞を捨てようとする若い合唱団員のエリス(テイラー・アトリー)とロフティ(オリバー・プリスコム)の凸凹コンビ、反戦を訴えつづけるピアニストのロバート(ロバート・エムズ)など大勢の人物のエピソードに触れていきます。正直、盛り込みすぎて一つ一つのエピソードが薄味になることもあり、連ドラならまだしも映画だったらもう少し削ればいいとも思いました。
ただ、戦争についても楽観的だったり悲観的だったり、積極的だったり消極的だったり、おそらく現実でも人それぞれ違った見方なんでしょう。特に貧しい労働者の若者たちが合唱と言う唯一の趣味も奪い取られて徴兵列車に乗せられるシーンと、それをなすすべもなく見守る町の老人、一方で贅沢にふける権力者といった構図は、べたかもしれませんが考えさせられるものがありました。
なにより、「ゲロンティアスの夢」のシーンが圧巻。エルガーも出てくるし、最初は実話をもとにしたのかと思いましたけれど、戦時下であってもこのような偉大な芸術が作られるというところに人間の底力のようなものを感じました。元の曲を知らない僕ですら、感動でしばらく身動きがとれないほどの名曲で、このシーンだけで★一つ追加でした。
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